ラピュタ阿佐ヶ谷で渡辺護特集「ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅」(7月23日(土)~11月14日(月))

by TAKARABUNE

ラピュタ阿佐ヶ谷で渡辺護特集「ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅」があります。

2016年7月23日(土)~11月14日(月) 連日21:00より
※9月12日(月)はメンテナンスのため休館。
ラピュタ阿佐ヶ谷:http://www.laputa-jp.com/laputa/program/watanabemamoru/

「ピンクの巨匠」「活動屋」──渡辺護は古き良き時代の映画人というイメージで語られることが多かった。けれども、私たちは本当の彼をまだよく知らない。たとえば、ピンク映画のことを一度カッコに入れて見てみるとどうなるか。渡辺は1931年生まれ。ゴダールやトリュフォーたちヌーヴェルヴァーグと同世代なのだ。それに、デビュー作『あばずれ』を『少女縄化粧』、『変態SEX 私とろける』と二度リメイクしていることが分かったのもつい最近だし、三本をまとめて見ることができるのは今回の特集が初めてなのだ。渡辺護自伝的ドキュメンタリーの中で彼はサービス精神たっぷりに喋りまくるが、饒舌の中に時折、幸せなときは過ぎ去った……という悲哀がのぞく。この悲哀と監督作にはどのような関係があるのか。渡辺護はこれから発見される監督、未知の可能性を持った監督である。

渡辺護(わたなべまもる)。1931年東京生まれ。早大文学部入学後、八田元夫演出研究所に入る。その後、TVドラマの俳優、脚本家、助監督などの経験を経て、1965年、『あばずれ』で監督デビュー。ピンク映画界で活躍。東てる美、美保純、可愛かずみのデビュー作を撮り、世に送り出した。現在、確認できる監督作は210本だが、それ以上撮ったと言われている。2013年、新作準備中にがんに倒れ、亡くなる。

7.23(土)~25(月)
あばずれ
1965年(S40)/扇映画/白黒/60分 ※16mm短縮版
■脚本:吉田貴彰(吉田義昭)/撮影:生田洋(竹野治夫)
■出演:飛鳥公子、左京未知子、黒木純一郎、千田啓介
父を死に追いやり、すべてを奪ったあの女が憎い!17才の立子は義母の文枝と愛人の早田に復讐する。少年の頃に見て感激した衣笠貞之助『雪之丞変化』のような映画を撮りたいという思いに溢れた監督デビュー作。「今見たら下手くそだと思うんだよね、演出が。でも、一カットずつ真剣にこだわって撮っている」。フィルムは現存しないと思われたが、二年前に神戸映画資料館が16mmプリントを発見。東日本初上映!

7.26(火)~8.1(月)
紅壺(復元版)
1965年(S40)/扇映画/白黒/78分 ※Blu-ray
■脚本:吉田貴彰(吉田義昭)/撮影:大森一郎(門口友也)
■出演:真山ひとみ、原あけみ、黒木純一郎、千田啓介
上京したヒロコは言い寄る男たちを利用してトップモデルを目指す。渡辺は主演の真山ひとみに一目惚れ。映画を撮る歓びに恋する歓びが加わった初々しい作品。「監督としちゃあさ、二本目でね、なんか生き生きとしていたんだよ。本当にバカだねえ」。だが、雑踏の中を行く主演女優をとらえたカメラはまさにヌーヴェルヴァーグ!発見された脚本をもとに正しい順番にいくつかのシーンを並べ替えた復元版を上映。
★「渡辺護が語る自作解説 新人女優を撮る」併映 ※DVD

8.2(火)~8(月)
女子大生の抵抗
1966年(S41)/扇映画/白黒/70分 ※16mm
■脚本:奈加圭司(石森史郎)/撮影:船橋登(遠藤精一)
■出演:谷口朱里、野上正義、可能かづ子、林美樹
『肉体の悪魔』の翻案。鎌倉を舞台に人妻と青年の悲恋が描かれる。公開当時、大和屋竺が「渡辺さん、やりましたね」と絶賛し、評論家の村井実が「これだけベッドシーンを撮れる監督はいない」と評価したが、今回の上映では、50年代から数多く作られた文芸メロドラマのピンク映画への転用の成功例として見直してみたい作品。「女子大生の抵抗?何でこんなタイトルになったんだ?そんな話じゃないだろ」
★「渡辺護が語るピンク映画史(補足)すべて消えゆくピンク映画1964-1968」併映 ※DVD

8.9(火)~15(月)
渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第一部「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」前篇
2012年(H24)/60分/カラー ※DVD
■監督:井川耕一郎/撮影:松本岳大/録音:光地拓郎/製作・編集:北岡稔美
■出演:渡辺護
渡辺護自伝的ドキュメンタリー(全十部)の第一部の前篇で渡辺が主に語るのは少年時代。生まれ育った王子の町の人々、学校をさぼって見た映画、空襲、そして敗戦。饒舌な渡辺がふいに黙ってしまうのは、若くして亡くなった憧れの兄・優について語った直後。「生きてたらすごいと思うよ、うちの兄貴はきっと……」。映画や演劇を愛した兄の思いを受け継ぐように、渡辺は映画の世界へと向かっていくことになる。

8.16(火)~22(月)
渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第一部「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」後篇
2012年(H24)/62分/カラー ※DVD
第一部の後篇で渡辺が語るのは監督としてデビューするまで。演劇青年からTVドラマの俳優へ。そして教育映画の助監督になり、ピンク映画の世界へ。デビュー作『あばずれ』について詳しく語る渡辺。だが、彼の語る『あばずれ』は死後に発見された『あばずれ』と異なる部分がある。おれならこう撮ると考える監督らしい癖が記憶を変形させたのか。死ぬまで現役であり続けようとした執念が静かに燃えている。

8.23(火)~25(木)
おんな地獄唄 尺八弁天
1970年(S45)/わたなべぷろ/パートカラー/76分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■脚本:日野洸(大和屋竺)/撮影:池田清二
■出演:香取環、国分二郎、青山リマ、武藤周作
女渡世人・弁天の加代の活躍を描いた『男ごろし 極悪弁天』の続篇にして渡辺の代表作。弁天と吉祥天の二つの刺青が互いを引き寄せ、加代とセイガクは運命的な恋に落ちる。渡辺は大和屋竺の脚本に惚れこみ、予算オーバー覚悟で撮影。「ラストカットを撮っていて涙が出てきた。おれはもう一度撮った。『尺八弁天』を撮り終えたくなかったんだよ」。モノクロの暗部やパートカラーの発色が美しい35mmプリントを上映。
★「渡辺護が語る自作解説 弁天の加代を撮る」併映 ※DVD

8.26(金)~9.1(木)
㊙湯の街 夜のひとで
1970年(S45)/わたなべぷろ/パートカラー/73分 ※16mm
■脚本:日野洸(大和屋竺)/撮影:池田清二
■出演:大月麗子、吉田純、二階堂浩、港雄一
渡辺護の代表作。温泉街に流れ着いたエロ事師の久生、雀、トリ金の三人。監督の久生はブルーフィルムの傑作を撮ろうとするが……。「ピンク映画でブルーフィルムをつくる話と称して無声映画の時代劇を撮りたかった」。愛する久生と離れ離れになった女優の雀が心身ともにぼろぼろになって早朝の河原にひっそりたたずむラストが切なくも美しい。「ドラマってのは“別れ”だ。別れがあって、時が過ぎていく……」
★「渡辺護が語る自作解説 エロ事師を撮る」併映 ※DVD

9.2(金)~4(日)
日本セックス縦断 東日本篇
1971年(S46)/東京興映/カラー/68分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■脚本:太田康(下田空、小栗康平)/撮影:古川丈夫
■出演:今泉洋、冬木京三、高見由紀、小城かほり
連続暴行殺人犯・大久保清を描いた実録犯罪もの。逮捕の翌月に群馬でクランクイン。連日報道される新たな情報を脚本に書き加えながら撮影は進められた。映画は大ヒット。『週刊読売』7月30日号に「“大久保の実演”をピンク映画にしたスゴイやつら」という記事が載った。「映画はどう撮ったってつながるんだと。このあと、おれの演出、変わったね」。犯行直後、大久保清がぼんやり煙草を吸う空虚な間が不気味。
★「渡辺護が語る自作解説 事件ものを撮る」併映 ※DVD

9.5(月)~11(日)
渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第二部「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」前篇
2012年(H24)/65分/カラー ※DVD
■監督:井川耕一郎/撮影:松本岳大/録音:光地拓郎/製作・編集:北岡稔美
■出演:渡辺護
渡辺護自伝的ドキュメンタリーの第二部は、撮って飲んで喧嘩してをくりかえすピンク映画のつわものどもの群像喜劇。前篇に登場するのは若松孝二、沖島勲、向井寛、山本晋也、小森白。渡辺は新人監督時代にデビュー作『あばずれ』を超えられないという秘かな悩みがあったことを告白。悪戦苦闘する中、主観カット/客観カット理論が生まれる。「おれは面白い映画が撮れる!っていう自信みたいなものが出てきた」

9.13(火)~19(月)
渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第二部「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」後篇
2012年(H24)/73分/カラー ※DVD
第二部の後篇に登場するのは、荒井晴彦、高橋伴明、小水一男、滝田洋二郎。『�湯の街 夜のひとで』を撮っていた頃に感じていたことを渡辺が語る。「おれの中にいつか監督ができなくなる……みたいな思いがあった」。活気のある撮影現場を醒めた目で見つめる売れっ子監督。そして80年代半ば、おれの時代は去ったと感じる。それでも、渡辺は言う。「おれの人生の中で一番大きいのはピンク映画時代ですよ」

9.20(火)~26(月)
谷ナオミ 縛る!
1977年(S52)/新東宝/カラー/60分
■脚本:高橋伴明/撮影:柳田友春
■出演:谷ナオミ、下元史朗、鶴岡八郎
奈美子は、生きた女の顔を求めて女中たちを縛る能面師の夫・敬一郎のあり方に耐えていた。だが、義弟の良介が自分に思いを寄せるあまり、納得の行く能面が打てず苦悩しているのを知り……。谷ナオミで拷問ものをという注文を渡辺は拒否。「変態映画は嫌だった。権力とかに縛られる女って解釈で、縄はベッドシーンの小道具として考えようと」。この作品のヒットで渡辺は緊縛ものを量産するようになる。
★「渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(一)」併映 ※DVD

9.27(火)~29(木)
少女縄化粧
1979年(S54)/新東宝/カラー/62分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■脚本:高橋伴明、渡辺護/撮影:鈴木史郎
■出演:日野繭子、岡尚美、下元史朗、野上正義
『あばずれ』の緊縛時代劇版リメイク。篠は父を死に追いやった義母への復讐を誓って巡礼の旅に出る。渡辺の狙いはさすらう少女を撮ることにあったが、彼以上に撮影の鈴木史郎が凝った画を撮ろうとしたため、製作費は大幅に超過。だが、冥界にまで下りて亡父に会うような美しいシーンが生まれた。「赤字出してひどい目にあったけど、ああ、こうやって撮ってよかったと思う」。ズームアップ映画祭第一回作品賞。
★「渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(二)」併映 ※DVD

9.30(金)~10.6(木)
婦女暴行事件 不起訴
1979年(S54)/国映/カラー/61分
■脚本:小水一男/撮影:久我剛
■出演:日野繭子、青野梨麻、港まゆみ、大杉漣
ドキュメントタッチの隠れた傑作。横須賀の荒涼とした風景の中、暇を持て余した三人組の若者が次々と女たちを誘い、輪姦に持ち込んでいく。「雨にたたられてね、大変な撮影だった。でも、役者もスタッフものりにのって撮ったんだよ」。事後の被害者女性のあり方を丁寧に描き分ける演出に注目。女優一人一人に印象に残る見せ場を作っている。刑事役で渡辺も出演。併映は浅草ロケの不良少女もので日野繭子主演。
★「非行女子学生 濡れはじめ(8mm短縮版)」併映 ※DVD

10.7(金)~14(金)
変態SEX 私とろける
1980年(S55)/現代映像企画/カラー/66分 ※NEW
■脚本:渡辺護、吉田義昭/撮影:久我剛
■出演:夏麗子、杉佳代子、佐野和宏、津崎公平
『あばずれ』の脚本を一部カットしたリメイク作品。8月20日の大阪日日新聞に撮影現場ルポが載った。渡辺は「ことしはこれが9本目」。撮影時間の限られたミナミのラブホテルでリハーサルを入念にくりかえしたあと、撮影。「安かろう悪かろうにはしたくない。ぼくにも監督としての意地がある。低予算の不自由な条件のなかで、やればやれることをみせるつもり」。今回の特集のためにニュープリントを上映。

10.15(土)~21(金)
産婦人科 人妻異常体験
1984年(S59)/国映/カラー/61分 ※16mm
■脚本:渡辺護/撮影:志村敏雄
■出演:織本かおる、田口和正、山本あゆみ、宇治絵美
兼人は精子減少症で子どもができないのをいいことに雅代と浮気。雅代の彼氏が描いた春画を買った兼人は驚く。この絵のモデルは妻の信子?荒井晴彦脚本の『女の診察 舌と唇』(80)のリメイク。「撮ったことを忘れていた作品だったけど、観直したら、あれくらいきっちり演出出来てるのは無いっていうくらいの出来だったよな」。『色道四十八手 たからぶね』のヒントとなったスワッピングコメディ。

10.22(土)~28(金)
片目だけの恋
2004年(H16)/ユーロスペース/カラー/88分 ※DVCAM
■脚本:井川耕一郎/撮影:鈴木史郎
■出演:小田切理紗、田谷淳、里見瑤子、下元史朗
17才のユカには9才の頃から心に秘めた人がいた。従姉妹の理恵子の夫・井上。井上たちが近所に引っ越してきたのをきっかけにユカの思いは止められなくなってくる。「“少女”はおれにとって昔から大切なテーマでね、おっかないくらい一途な少女の恋を描きたかったんだ。だけど、主人公にふさわしい子がなかなか見つからなかった」。小田切理紗に出会った渡辺はのめりこむように演出。少女ものの最後の作品。

10.29(土)~11.4(金)
喪服の未亡人 ほしいの…
2008年(H20)/国映、新東宝/カラー/61分
■脚本:井川耕一郎/撮影:清水正二
■出演:淡島小鞠、岡田智宏、倖田李梨、結城リナ
渡辺護の遺作。遺品整理をしていたいずみは夫の不倫を疑う。「殺してやる!もう死んでるけれど」。死者に復讐しようとする女の悲喜劇。「おれはこれからのピンクはこれでどうだ!って気持ちで撮った。ピンク映画の新しい基準をつくるつもりで撮ったわけです」。併映は渡辺護版『夜の蝶』。谷ナオミ、東てる美ダブル主演で、夜の新宿に生きる女たちの争いを描いたもの。鏡を使った凝った画作りが興味深い。
★「花の女王蜂性競乱(8mm短縮版)」併映 ※DVD

11.5(土)~11(金)
色道四十八手 たからぶね
2014年(H26)/PGぴんくりんく/カラー/71分
■企画・原案:渡辺護/監督・脚本:井川耕一郎/撮影:清水正二
■出演:愛田奈々、岡田智宏、なかみつせいじ、佐々木麻由子
新婚の一夫は妻の千春が数年前から叔父の健次と不倫していたことを知り、ショックを受ける。「復讐しよう!」と訴える叔母の敏子。でも、一体どうやって?春画や四十八手という日本的な題材を使ったスワッピングコメディ。渡辺は「絶対に面白い映画にする!」を宣言して準備に入ったが、がんで亡くなる。脚本の井川が代わって監督。ニッポン・コネクション2015ニッポン・ヴィジョンズ審査員特別賞。

11.12(土)~14(月)
紅蓮華
1993年(H5)/三協映画/カラー/119分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■脚本:沖島勲、佐伯俊道/撮影:鈴木史郎
■出演:役所広司、秋吉久美子、武田久美子
戦後、未亡人のさくらは自分の意思で生きることを決意、建造を再婚相手に選ぶ。だが、建造には別れを拒む恋人がいて……。ある女社長の自伝の映画化だが、実質的な主役は太宰治のように破滅に向かっていく夫・建造。渡辺は建造役に周囲の反対を押し切ってTVドラマで活躍していた役所広司を起用。役所は渡辺の期待に見事に応えた。「おれ、泣けてきたもんね。いい芝居するんだよ」。渡辺護の代表作の一つ。

【料金】
一般…1,200円 シニア・学生…1,000円 会員…800円 
※水曜サービスデー…1,000円均一